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Solo Exhibition

" 渦としかく "

Wholes andQuadrangles

日程 |2023年9月15日(金) − 10月14日(日)

   営業日:火曜 − 土曜日

   定休日:日・月・祝日


時間 |12:00 − 18:00

場所 | CLEAR GALLERY TOKYO

    岸田ビル2F 7-18-8

    Roppongi Minato-ku, Tokyo


交通アクセス 日比谷線「六本木駅」より徒歩5分


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Press Release ------------------


この度CLEAR GALLERY TOKYOは、稲垣美侑の個展「渦としかく」を開催いたします。 弊廊で2年ぶりの個展となる本展では、稲垣が2018年から継続的に訪れている三重県鳥羽市の離島で出会った情景から制作された新作の油彩画、陶器などの立体作品を展示いたします。

稲垣は、自分の置かれている状況や他者の理解など様々な環境を含めて、自身のごく素朴な関心として「目の前に広がっている世界がどんな姿だったのか」ということを考えたり想像することが、作品をつくる動機付けのひとつになっていると言います。そして身辺にある環境を観察し、日常の積み重ねから生まれる景色やその場所に宿る記憶や感触、その場所に触れることで得たイメージの断片を、画面の中で確かめながら再構築しています。 また稲垣は、制作においての重要な取り組みとして、何度も繰り返し取材地を訪れることを続けています。それは稲垣にとって何か大きな実践というよりも、日常の延長線上の中で眺められる景色への探求心であり、行ったり来たりを繰り返し、その往復運動で打ち返される感覚や、生き物や他者からの目線、その地に残された言い伝えなど周囲や環境とのやり取りから、何か現実だけではない人間由来の想像力や遊戯的な行為によって紡がれる物語の切れ端のようなものを、絵や展示空間のなかで描き起こそうとしています。

本展のタイトルである「渦としかく」は、2018年頃から継続的に訪れている三重県鳥羽市の離島で出会った建造物と、その建物を棲家とするカタツムリから名付けられています。 折に触れて幾度なく訪れるその離島で目的もなくただ道なき道を歩み進める中、突然林の中に出現したコンクリートの建物は、戦時中に砲弾の着弾点を観測するために建てられたものです。今は用途を失いカタツムリの居心地の良い棲家となり、かつて砲弾を観測していた大きく開口された窓からは、美しい水平線を眺望することができます。 人間主体で作られた建物が、その意図とは関係のないところで新しい役割を持ち、島の自然の一部と化した景色、カタツムリと廃墟の共存的関係性から着想を得て制作された新作の作品群は、隣り合う面と面の色や形の関係性へと還元され、画布と溶け込むように丁寧に重ねられた揺らぎある色彩が印象的な抽象的な絵画や、異素材で構成されたコラージュ作品、また今年から見られる陶器の立体作品として展示発表いたします。 制作活動の初期より、稲垣にとって絵画制作とは、絵画が存在する空間を含めての表現であり、本展は稲垣の言葉でいうところの「絵画的空間」が意識された展示になります。そのような意識を顕著に空間構成に取り入れたのが三重県立美術館「パラランドスケープ “風景”をめぐる想像力の現在」(2019年)での展示になりますが、環境を往還する稲垣の活動と重なるように外へと広がった表現は、2019年以降一時的に絵画の内へと立ち戻され、絵の役割やその中で起こることに向かい合う制作時期を意識的に設けてきました。 しかし今年に入って再び、絵画内の色や形が、陶器や異素材で制作された作品などに緩やかに展開されるようになったのは、イメージを探る過程や作る行為の中でこぼれ落ちてくるもの含めて、それぞれを表現内の一部として空間に存在させてみる、という試みと意識の変化が表れています。

稲垣が提示する、違うものが存在しながらもそれぞれが響き合うことで生まれる新しい景色は、私たちの日常の中にまだ見えていない多くの愉快な光景が広がっていることを思い起こさせます。会場を歩きながら、鑑賞者それぞれの視点でお楽しみいただけたら幸いです。




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