BIOGRAPHY
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Miyuki INAGAKI
Born in Kanagawa, Japan 1989.
Lives and Works in Ibaraki, Japan.
BIOGRAPHY
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Exhibitions|2021

ぐぜり Subsong
Solo Exhibition
3/12 (Fri) - 4/17 (sat), 2021
CLEAR GALLERY TOKYO
Roppongi, JAPAN
HP : https://cleargallerytokyo.com/miyuki-inagaki-subsong

















Photo by Hagoromo OKAMOTO
この度CLEAR GALLERY TOKYOは、稲垣美侑による「ぐぜり」展を開催いたします。
稲垣は、その土地の風土や人、建造物を考察し、自らその場所を訪れ目にした情景や、その土地と自身との関係性を、油彩画やインスタレーションで表現しています。
稲垣の絵画において色の存在は、作家と異なる空間とを媒介する役割を担っています。
その場所に記憶されている人間の営みと生のエネルギー、音や匂い、質感のイメージを咀嚼し、地層のように重ねられる色彩は、作家によって抽出された風景のかけらであり、描くという行為はその場所に触れ、そこに作家自身が存在している(た)という確認でもあります。
本展「ぐぜり」では、稲垣の自宅近隣、作家にとってごくありふれた場所が描かれています。
それは単なる風景の描写ということだけでなく、カンヴァスに筆を重ね、実態として立ち上がった作家の足元に広がる外界であり、作家自身の所在の証明であるのと同時に、まだ見ぬ風景への憧憬でもあります。
CLEAR GALLERY TOKYO is pleased to present “Subsong”, the solo exhibition by Miyuki Inagaki.
Inagaki observes climate, people, and buildings, and uses oil paintings and installations to depict the scenes she has visited and seen, as well as the relationship between the local environment and herself.
The presence of color in her paintings plays the role of mediator between the artist and the different spaces. She digests the images of human activities, raw energy, sounds, smells, and textures that are remembered in the place, and the colors that are layered like strata are pieces of the landscape extracted by the artist.
In this exhibition, Subsong, the location is set in Inagaki’s neighborhood where her norms are interspersed. It is not only a mere depiction of a landscape but also the creation of an external world that expands from where the artist is standing by layering brushstrokes on the canvas.
家々の戸が引かれ、ゆるやかに朝が訪れる。
庭先に響きわたる声__、
春を待ちわびていた若鳥たちが、
つたない音素(トーン)を口遊む。
蹠(あしうら)に踏む土、やわらかな風、揺らぐ木々。
屋根裏を走り去っていくもの。
交わされる声、日々の手仕事、芽吹く青。
眠りにつく翅(はね)、枝先の影。
慈しむ庭__、日々の音。
目の前が開けて、色をもって語りだす。
飛びかう鳥、近所とその周辺のこと。
さえずりを覚える過程、若鳥たちの断続的なぐぜり鳴きに耳を傾けていると、
不思議と音のひとつひとつが景色と響き合い、色の粒となって眼前に立ち現われてくる。
いまここに在ることの手触り、温度、匂い、息遣いや臨場感__、私( たち) の生きる場所。
とるに足らない日常や、その足元に広がる風景の断片を拾い上げていくように、描き、問い、くりかえし対話すること。
そうやって日々が、私にとっての、あるいは、あなたにとっての、固有の彩りをもって画布のなかで語り始める。
歩くくらいの速度で、今日もまた、日々の音(ね)に耳を傾けてみる。
稲垣美侑
(註) ぐぜり subsong
若鳥がさえずりを学ぶ過程で鳴く、不完全なさえずり(subsong)のこと。同種や異種の鳴き真似などを入り混ぜながら、とりとめもなく鳴くこともある。春先には、若鳥も成鳥もぐぜりながら練習し、少しずつさえずり(song)を習得していく。また、さえずりを成す個々の音を音素(tone)と呼ぶ。