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​Exhibitions|2021
 
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ぐぜり   Subsong
​Solo Exhibition
3/12 (Fri) - 4/17 (sat),  2021
CLEAR GALLERY TOKYO
Roppongi,  JAPAN
​HP :  https://cleargallerytokyo.com/miyuki-inagaki-subsong
 

家々の戸が引かれ、ゆるやかに朝が訪れる。
庭先に響きわたる声__、
春を待ちわびていた若鳥たちが、
つたない音素(トーン)を口遊む。

蹠(あしうら)に踏む土、やわらかな風、揺らぐ木々。
屋根裏を走り去っていくもの。
交わされる声、日々の手仕事、芽吹く青。
眠りにつく翅(はね)、枝先の影。
慈しむ庭__、日々の音。

目の前が開けて、色をもって語りだす。
飛びかう鳥、近所とその周辺のこと。

さえずりを覚える過程、若鳥たちの断続的なぐぜり鳴きに耳を傾けていると、

不思議と音のひとつひとつが景色と響き合い、色の粒となって眼前に立ち現われてくる。


いまここに在ることの手触り、温度、匂い、息遣いや臨場感__、私( たち) の生きる場所。

とるに足らない日常や、その足元に広がる風景の断片を拾い上げていくように、描き、問い、くりかえし対話すること。

そうやって日々が、私にとっての、あるいは、あなたにとっての、固有の彩りをもって画布のなかで語り始める。

歩くくらいの速度で、今日もまた、日々の音(ね)に耳を傾けてみる。


稲垣美侑

 

(註) ぐぜり subsong
若鳥がさえずりを学ぶ過程で鳴く、不完全なさえずり(subsong)のこと。同種や異種の鳴き真似などを入り混ぜながら、とりとめもなく鳴くこともある。春先には、若鳥も成鳥もぐぜりながら練習し、少しずつさえずり(song)を習得していく。また、さえずりを成す個々の音を音素(tone)と呼ぶ。

​Reference

“「ぐぜり」の絵画、あるいは「庭」の再構造化​”        吉村 真  (美術史家)  

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